2010年06月05日

アメリカ赤十字ウィルダネス&リモート・ファーストエイドコース

こんにちは。
めっつぇんばーむです。

AMR-JAPANの主催ではなかったのですが、先日、アメリカ赤十字(American Red Cross:ARC)の Wilderness & Remote First Aid という1泊2日の野外救急法講習を受講してきたので報告します。

ウィルダネス・ファーストエイド雨の中の屋外救助訓練
雨の中の救助訓練

アメリカン・レッド・クロスといえば、AHA関係者の皆さまにとってはファーストエイド・ガイドラインでなじみがあるかもしれません。

AHAガイドライン2005に載っているファーストエイド・ガイドラインは、実はアメリカ赤十字とアメリカ心臓協会の協同編纂によるもの。どちらかというとアメリカ赤十字が主体で作ったものと言ってもいいかもしれません。

日本版ガイドラインに載っている応急手当編も、このアメリカ赤十字のを参考にしているというか、ほぼそのまんま、です。

そんなファーストエイド(応急手当)のスタンダードを打ち立てたアメリカ赤十字が、ガイドライン2010を意識しつつ2010年2月にリリースした最新コースが、今回受講したウィルダネス&リモート・ファーストエイドコースです。


トピックはアメリカ労働安全衛生局OSHA規格に則った内容が網羅されていますが、それだけには留まりません。

なにせ、Wilderness & Remote、つまり「大自然のまっただ中や文明とは隔絶された僻地での救急法」ですから、救急車を呼んだらすぐに来る、なんてことはまったく想定されていません。

自分たちである程度の評価・診断をし、限られた装備で数日かかるかもしれない救助をまったり、場合によっては搬送をするという、高度な応急処置を学ぶコースです。

ある意味、ちょっとした診断法や治療を含みます。しかしこのコースは医療従事者向けではなく、あくまで市民向け。

このあたりのギャップがとても刺激的です。

今回はアメリカから、ウィルダネス&リモート・ファーストエイドコースの開発担当者を日本に招いて、今年2月に全米リリースされたばかりのできたてほやほやの貴重なコースを日本初開催してもらうことができました。

日本人が日本国内でこのコースを開こうとしたら、日本のこれまでの救急法とのあまりのギャップの大きさや、医師法の関係から、なかなか話は進まなかったと思います。

医療資格を持たない者が緊急避難的にどこまでの医療行為が許されるか?

そんな命題を突きつけられる内容でもあります。

しかし考えてみたら、医師法というのは秩序が保たれた社会環境を想定して作られたもので、ウィルダネス&リモートでは、そもそも想定外です。

このことは国土交通大臣が発行する船舶衛生管理者免許制度でも明らかです。

あまり知られていませんが、遠洋漁業の船舶で医師の代わりとして乗り込む船舶衛生管理者は筋肉注射、皮下注射(皮下補液を含む)や、創の縫合が認められています。

どんなに専門的な教育を受けるのかと思いきや、1週間程度の講習で取れる資格にも関わらず、です。(実習は正味一日。私の知人はサメの皮で縫合や注射の練習をしたそうです)

救急救命士が心停止した人に針一本刺すのに喧々諤々し、いまだに色々もめているのに、船舶の世界では何一つ問題になることなく、医療の素人に、看護師でもできないような高度な医療行為を認めているのは、その活動の場がウィルダネス&リモートだからです。

いまは、船舶は特殊な世界だから、と別格扱いにしがちですが、それと似たような状況は陸の上でもいくらでもあります。この点を正しく把握して、本当に必要なケアが提供できるような体制が望まれます。

その良いモデルケースとして、このウィルダネス・ファーストエイドが日本でも広まればと思っています。



さて、実際のコースの内容ですが、なかなかハードな内容でした。

本来は、1日15キロ程度歩くトレッキング行程の中で講習が展開されるそうです。泊まりはもちろんキャンプで、受講者はキャンプ道具一式を持って本当のキャンプ山行のまっただ中でファーストエイドを学ぶようです。

今回は、宿泊施設にベースキャンプを置き、その周辺の山川で講習が展開しました。

アメリカに比べれば若干甘くはしてもらいましたが、それでも私たちにとってはハード。雨でも容赦なく屋外に出てシミュレーショントレーニングを行いますし、夜間の救助訓練、本当に川に入っての水難救助訓練など、ここまでリアルにするのか! とうならされるものばかりでした。

1泊2日のプロバイダーコース修了後は、続いてインストラクターコース。

今回、日本に来てくれたAmerican Red Crossインストラクターは、救命士免許を持った教育学の大学教授で、Wilderness & Remote First Aidのインストラクターコース開発責任者。

ということで、ウィルダネス・ファーストエイドの教材設計やウィルダネスならではの教育背景などを教えていただく貴重な機会に恵まれました。

ただでさえ新しいことを学ぶというストレスに加えて、屋外での天候などによるストレス。

ストレスをうまく学習に活かすには

インストラクターコースを受講してわかったのは、今回は雨が降ってくれて良かった、という点。悪天候というのは、リアルさの追求だけではなく、学びのファクターとして重要だという点。

AHAもそうですが、アメリカ人の作る教材の背景を知れば知るほど、感嘆とさせられます。ときとしてぞっとするほどに。

ウィルダネス・ファーストエイド・インストラクターコース傷の作り方
ムラージュ(模擬創)の作り方を学ぶ



内容的にも、教育サイエンス的にも、満足感のある内容でした。



最後に蛇足ながら、日本赤十字社とAmerican Red Crossは基本的にまったく無関係、というか提携はありません。今回の野外救急法はアメリカ赤十字独自のもので、日本赤十字には同レベルの高度な救急法講習は存在しません。
posted by AMR-JAPAN at 11:48| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
私は現在アメリカにおいて、語学を学んでおります。今後日本において、教育現場の下で働こうとしているのですが、このウィルダネス・ファーストエイドの教育はアメリカでは受講できないのでしょうか?
Posted by HiroshiKawaguchi at 2011年06月08日 12:19
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